皆様、こんにちは。
これまでのコラムでは、相続についてご家族で話し合うことの大切さをお伝えしてきました。
今回からは、私がこれまで実際にお受けしてきたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しながら、相続不動産についてどのように考えていけばよいのかをお話ししたいと思います。
■「実家を売りたい姉」と「残したい弟」
「両親が残してくれた実家について、姉と意見が合わず、話が止まっています」
以前、ある方からそんなご相談をいただきました。
お話を伺うと、お姉様は、
「今後誰も住まないのであれば、空き家のままにしておくより、売却してきちんと分けた方がよいのではないか」
とお考えでした。
一方、弟様は、
「自分が生まれ育った家で、両親との思い出もたくさんある。できれば売りたくない」
と考えていらっしゃいました。
一見すると、まったく反対の意見です。
しかし私は、この段階ですぐに「売却しましょう」「残しましょう」というお話はしませんでした。
■ まず、お一人おひとりのお話を伺う
こういうときに私が大切にしているのは、まずそれぞれのお話を丁寧に伺うことです。
弟様のお話を伺っていくと、
「将来、実家をリフォームして自分たち家族が住むことも考えている」
というお気持ちがあることが分かりました。
一方、お姉様にもお話を伺いました。
すると、お姉様が心配されていたのは、実家そのものではなく、誰も住まない家を残すことで、近くに住む弟様だけに管理や費用の負担がかかってしまうことでした。
最初は「売りたい」「売りたくない」と対立しているように見えたお二人でした。
しかし、じっくりお話を伺ってみると、そこにはそれぞれに理由があり、そして、お互いを思いやるお気持ちもありました。
■「売るか、残すか」の二択にしない
そこで初めて、現実的にどのような方法が考えられるのかを一緒に整理していきました。
弟様が実家を引き継ぐ方法。
一定期間、別の形で不動産を活用する方法。
あるいは、売却する場合でも、ご家族が気持ちを整理する時間を十分に取ってから進める方法。
相続した不動産については、必ずしも「売る」「残す」の二つしか答えがないわけではありません。
また、方法によっては税務や法律の問題も関係しますので、必要に応じて税理士・司法書士・弁護士など、それぞれの専門家の力を借りることも大切です。
このご家族の場合も、さまざまな可能性を検討したうえで、お二人が納得できる方向を見つけていくことができました。

■ 答えは、ご家族のお話の中にある
「早く売った方がいい」
「思い出のある家だから残したい」
言葉だけを聞けば、意見は正反対かもしれません。
でも、その理由まで丁寧に伺っていくと、見えてくるものがあります。
私は、不動産の手続きを進める前に、まずご家族それぞれのお気持ちや事情を整理することが大切だと考えています。
■ 不動産を売ることが、私の仕事の目的ではありません
私は30年以上、不動産に携わる中で、一番大切にしてきたことがあります。
それは、
「不動産を売ること」ではなく、
「ご家族が納得できる答えを見つけること」です。
売却することが一番良い場合もあります。
残すことが一番良い場合もあります。
あるいは、今すぐには決めず、少し時間を置いた方が良い場合もあるでしょう。
相続には、それぞれのご家族の事情があります。
だからこそ私は、まず皆様のお話を丁寧に伺い、そのうえで不動産の専門家として考えられる選択肢をお伝えしたいと思っています。
「不動産会社に相談することは、売却を決めることではありません。」
大切なのは、急いで売ることでも、無理に残すことでもありません。
ご家族が納得できる答えを、一つずつ一緒に見つけていくこと。
それが、相続した不動産について考える第一歩ではないでしょうか。
まだ「売る」「残す」を決めていない段階でも構いません。
「何から考えればよいのか分からない」
そんなところからでも、どうぞ安心してご相談ください。
ご相談いただいたからといって、必ずご依頼いただく必要はありません。
一緒に状況を整理するところから、お手伝いできればと思っています。
総合ホームサービス株式会社
森下 猛
【不動産経験30年超/旧三井不動産グループ20年勤務/宅地建物取引士/二級建築士】
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